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キサントモナス病原菌に対するキトサンの作用
Institute of Biotechnology, Zhejiang University 中国 浙江大学バイオテクノロジー研究所
要 約
分子量の異なる2種類のキトサンの抗菌作用とメカニズムを、ポインセチアから取り出した12種のXanthomonas(キサントモナス)株に対して調査。 結果は2種類のキトサンがOD(Optical Density、光学密度、光学濃度)に基き、細菌の成長を著しく阻害したことを示した。透過電子顕微鏡観察により、キトサンがプロトプラスト(細胞壁を取り除いた細胞)濃度と表面形態の変化を引き起こしたことが明らかになり、 一部の細胞ではメンブレーン(細胞膜)と細胞壁がひどく歪み、破壊された。2種類のキトサンがバイオフィルム*(菌の膜)の塊を取り除いたことが確認された。この研究でバイオフィルムと細胞膜がキトサンの抗菌のメカニズムに重要な役割を果たしていることが明らかになった。
*バイオフィルム(Biofilm):菌膜(きんまく)とは、微生物により形成される構造体。
キサントモナス属細菌由来の病害
モモせん孔細菌病、カンキツかいよう病、ブドウ斑点細菌病、マンゴーかいよう病
キャベツ黒腐病、ブロッコリー黒腐病、ダイコン黒腐病などアブラナ科の黒腐病
イネ白葉枯病、ハクサイ黒腐病、ニンジン斑点細菌病、ダイズ葉焼病など
低レベルの銅剤とキトサン併用によるジャガイモの疫病に対する防除効果
米国ワシントン州立大学植物病理学部(2006)
要 約
有機栽培者は、Phytophthora infestans (Mont.)de Bary(学名:ファイトフトラ インフェスタンス)によって引き起こされるジャガイモ疫病を、硫酸銅五水和物(CuSO4・5H2O)、酸化銅、または水酸化銅などの天然の銅化合物で管理している。 しかし、アメリカ合衆国農務省USDA のオーガニックプログラム(National Organic Program)による最新の銅残の留物に関する環境問題では、銅剤を低減して疫病を防除する必要性を示している。
この研究では、低レベルの硫酸銅五水和物をキトサン(展着剤として)と組み合わせて使用する病害対策について記述されており、切除した葉の分析では、有効成分として水酸化銅を含む市販の殺菌剤に対して、推奨量の40 倍低い銅レベルで、疫病の抑制、および銅剤によく起こる葉の⻩変に対して効果があったと報告している。
EUでキトサンが有機農業で使用許可
2017.1
欧州委員会 農業農村開発局は、2017年1月有機農業で使用が認められるBasic Substances(天然由来物質)としてキトサンを許可しました。
「”Basic Substances”とは、 EC規定No178/2002 Article2において食品と定義され、動物、または植物由来であり、人間が摂取するもの。動物の餌、薬、化粧品、タバコ、残留物、汚染物質を含まないもの。EC規定No1107/2009 Article23では、”Basic Substances(天然由来物質)”とは植物活性物質と定義され、内分泌崩壊、神経毒、免疫毒性を引き起こす遺伝的な能力を持たないもの。植物保護剤(農薬)ではないが、植物を保護するために使用するもの。」
キトサンはこの定義に適合しており、ドイツやフランスの強い要望もあり、このたびの有機農業での使用を許可されることとなった。※使用目的は、防カビ、防菌として。詳しくはブログをご参照ください。
台風、風害、降雹害などの後には速やかにキトサン散布を
キトサンには植物の傷の修復作用があることがわかっています。台風などの強風に曝されると植物の葉や茎は目に見える傷、また目に見えない細かな傷が無数にできてしまい、その傷口から病気の感染が起こる可能性が高くなります。傷口の修復に時間がかかると養水分を失い、病気の発生など様々なリスクが発生します。傷口修復と植物免疫の回復のため、速やかなキトサン散布が効果的です。
キトサン散布により期待できる効果
①病原菌感染を予防するキチナーゼ、グルカナーゼなどの溶菌酵素の活性
②フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)活性によるカルス(未分化細胞)形成よる傷口の修復促進とリグニン合成の促進(繊維の強化)
③ペルオキシダーゼ活性によるリグニン合成促進
④細胞内での抗菌物質ファイトアレキシンの誘導
⑤植物ホルモン エチレン、ジャスモン酸の誘導、病気の感染に対して抵抗性向上(殺菌、抗菌作用を含む)
⑥細胞分裂の活性により光合成能の向上(葉緑素クロロフィルa₊bの増加)
⑦塩害による枯れを低減(キトサンと塩素のキレート結合)
ぜひ、参考にしてください。