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瀬尾義治

EUでキトサンが有機農業で使用許可


欧州委員会による植物防疫に関する最終報告より           EGTOP/2016  EUROPEAN COMMISSIION DIRECTORATE-GENERAL FOR AGRICULTURE AND RURAL DEVELOPMENT  Expert group for Technical Advice on Organic Production(EGTOP) 下記文章中の当会はEGTOPを指す  FINAL REPORT ON PLANT PROTECTION(Ⅲ)   4.3 キトサン塩酸塩  紹介 キトサン塩酸塩はキトサンとして知られており、Nアセチルグルコサミンを含むグルコサミンの高分子多糖。現在の要求は、植物の自然防御の刺激剤としての使用について。キトサンは植物防疫以外にも水処理の濾過剤、ワインの清澄剤、止血剤など薬品としても幅広く使用されている。  一般製品と有機製品における評価 キトサン塩酸塩は植物防疫の基本資材と認められている。それは食品であり、また有機製品の“基本資材”のリストにも認められている。また、有機ワイン製造において、当会によりキトサンは補助剤として明確に評価されている。市場には、ここで記載されたキトサンに類似する効果を謳うキチン配合の肥料も販売されている。  農学的な使用、技術的、生理学的な機能性の使用目的 当委員会の評価によれば、キトサン塩酸塩は病原性カビとバクテリアに対する植物抵抗性のエリシター(誘導因子)として作用する。この代表的な用途は果物、小さな果実のベリー類、野菜、穀物、薬味野菜、飼料、穀物(種子処理)、ジャガイモ塊茎(種子処理)、テンサイ(種子処理)において病原性のカビやバクテリアの制御として認められている。さらに、関係書類では、葉面散布により水の消費を抑制すること、種子処理では耐病性が向上することなどが記載されている。1回の使用量は200㎎/㎡、ヘクタールでは2㎏/haと記載されている。  ▶10aの1回の使用量:200g/10a →キトサン3%溶液の場合、原液6.6L≒6.6㎏程度  代替使用の必要性 作物の収量が害虫を制御することに依存ため、硫酸銅、微生物に基づく植物保護剤などいくつかの選択肢がある。予防的防除(参照COS-OGA,chapter4.4)以外では、キトサンは恐らく有機農産物の健康を改善するための手段となり、銅剤(殺菌剤)の使用軽減に役立つ可能性がある。  原材料の原産、製造方法 キトサンは自然界では、カニやエビなどの甲殻類、昆虫の外皮、カビの細胞壁などに存在する。植物防疫に使用される原料はカニの甲羅由来、エビ養殖産業の副産物。カニの甲羅は塩酸で脱カルシウム処理をした後、水で洗浄される。キチンは水酸化ナトリウムにより脱アセチル処理される。溶液は塩酸で中和され、水で洗浄され乾燥される。  環境の問題、資源の利用、リサイクル、持続可能性 当会はキトサンの製造、および使用に関する環境への影響に関して懸念を持っていない。製造工程中の塩酸と水酸化ナトリウムは塩化ナトリウム(塩)となり、環境規則に従いクリアされている。原材料は食品産業の副産物である。水のリサイクル、そして植物、動物由来の副産物を植物や家畜への投与は、有機農業の明確な原則である。(参照 Reg. 834/2007, Art.5(c)). キトサンが持続可能な漁業または有機水産養殖や昆虫の飼育から得る副産物であるならば、当会は懸念を持たない。  動物の生活保護の問題 問題がない。  人間の健康の問題 当会は懸念を持たない。  食品の品質と信頼性 当会は懸念を持たない。  伝統的な使用と有機製造における先例 キトサンによる植物強化剤は、過去にドイツの有機農業において使用されている。キトサ ン配合の肥料や土壌改良剤は他のEU国でも使用されている。  EU圏外の有機農業での使用許可 /  国際食品規格(Codex Alimentarius)の有機食品の生産、製造工程、ラベリング、販売に関するガイドラインでは、キトサンは言及されていない。但し、キチンの殺センチュウ剤は認められている。アメリカの有機生産においては、キトサンは合成品と考えられているため、使用することができない。IFOAM(国際有機農業運動連盟)の基準では、“動物製剤と油”は植物防疫に使用が認められている。  その他の該当する問題 なし   キトサン塩酸塩は、農学的な評価、その他の環境に負荷を与えない植物防疫資材の使用を含む幅広い対策のひとつとして、使用することができる。そして、環境に負荷を与える製品の使用を低減する手段となりうる。キトサン塩酸塩のような植物防疫機能の活性は、病原菌の感染によっても起こることで、作物の代謝促進を誘発する。つまり、これは自然の反応である。廃棄物のリサイクル、植物、動物由来の副産物を植物や家畜に投与することは、有機農業の明確な原則である。(参照 Reg. 834/2007, Art.5(c)). しかしながら、原料は持続可能な漁業または有機水産養殖から使用されなければいけない。これは、当会の肥料Ⅰ.3.3章の報告にあるキチンの推薦と一貫している。当会はキトサン塩酸塩の使用に関して懸念を持っておらず、銅や硫酸のような現在認められているいくつかの資材よりも、むしろキトサンを好ましく考える。キトサン塩酸塩は、基本資材であり、食品に分類される。そのため、附属書Ⅱの中に現在一覧に記載されている“基本資材”に認められ、別にリストを作る必要はない。(参照 4.8章)  結論 当会はキトサン塩酸塩の使用は、理事会規則(EC)No,834/2007に規定する有機農業の目的、基準、原則に則しているという結論に至った。当会はこの一覧(リスト)の次の“持続可能な漁業、また有機水産養殖(現在のEUの定義による)から得られるキトサンのみ”という制限を修正することを推奨する。附属書Ⅰのキチンについても制限を修正する。  以上  ▶キトサン塩酸塩とは、工業的に製造されたキトサンを意味し、今までのEUの有機農業では、漁業や水産養殖から得られるカニ殻やエビ殻を使うことだけが許されていたことを、今回の修正により、工業的に製造されたキトサン(塩酸塩)を使用することが認められた。キチンについても同様に修正される。  文中の▶は、追加説明として付け加えたもので、原文には存在しません。

欧州委員会 農業農村開発局は、2017年1月有機農業で使用が認められるBasic Substances(天然由来物質)としてキトサンの使用を許可しました。※Bacic substances=基礎資材(訳)を修正しました。

「”Basic Substances”とは、 EC規定No178/2002 Article2において食品と定義され、動物、または植物由来であり、人間が摂取するもの。動物の餌、薬、化粧品、タバコ、残留物、汚染物質を含まないもの。EC規定No1107/2009 Article23では、“天然由来物質”とは植物活性物質と定義され、内分泌崩壊、神経毒、免疫毒性を引き起こす遺伝的な能力を持たないもの。植物保護剤(農薬)ではないが、植物を保護するために使用するもの。」

キトサンはこの定義に適合しており、ドイツやフランスなどで農業利用されていた経緯もあり、このたびの有機農業での使用を許可されることとなった。※使用目的は、防カビ、防菌として。

詳しくは欧州委員会 FINAL REPORT OF PLANT PROTECTION(Ⅲ)をご参照ください。

以下は、pp.11-13の訳です。

欧州委員会による植物防疫に関する最終報告より           EGTOP/2016

EUROPEAN COMMISSIION

DIRECTORATE-GENERAL FOR AGRICULTURE AND RURAL DEVELOPMENT

Expert group for Technical Advice on Organic Production(EGTOP)

下記文章中の当会はEGTOPを指す

FINAL REPORT ON PLANT PROTECTION(Ⅲ)

4.3 キトサン塩酸塩

紹介

キトサン塩酸塩はキトサンとして知られており、Nアセチルグルコサミンを含むグルコサミンの高分子多糖。現在の要求は、植物の自然防御の刺激剤としての使用について。キトサンは植物防疫以外にも水処理の濾過剤、ワインの清澄剤、止血剤など薬品としても幅広く使用されている。

一般製品と有機製品における評価

キトサン塩酸塩は植物防疫の天然由来物質のひとつと認められている。それは食品であり、また有機製品の“天然由来物質”のリストにも認められている。また、有機ワイン製造において、当会によりキトサンは補助剤として明確に評価されている。市場には、ここで記載されたキトサンに類似する効果を謳うキチン配合の肥料も販売されている。

農学的な使用、技術的、生理学的な機能性の使用目的

当委員会の評価によれば、キトサン塩酸塩は病原性カビとバクテリアに対する植物抵抗性のエリシター(誘導因子)として作用する。この代表的な用途は果物、小さな果実のベリー類、野菜、穀物、薬味野菜、飼料、穀物(種子処理)、ジャガイモ塊茎(種子処理)、テンサイ(種子処理)において病原性のカビやバクテリアの制御として認められている。さらに、関係書類では、葉面散布により水の消費を抑制すること、種子処理では耐病性が向上することなどが記載されている。1回の使用量は200㎎/㎡、ヘクタールでは2㎏/haと記載されている。

▶10aの1回の使用量:200g/10a →キトサン3%溶液の場合、原液6.6L≒6.6㎏程度

代替使用の必要性

作物の収量が害虫を制御することに依存するため、硫酸銅、微生物に基づく植物保護剤などいくつかの選択肢がある。予防的防除(参照COS-OGA,chapter4.4)以外では、キトサンは恐らく有機農産物の健康を改善するための手段となり、銅剤(殺菌剤)の使用軽減に役立つ可能性がある。

原材料の原産、製造方法

キトサンは自然界では、カニやエビなどの甲殻類、昆虫の外皮、カビの細胞壁などに存在する。植物防疫に使用される原料はカニの甲羅由来、エビ養殖産業の副産物。カニの甲羅は塩酸で脱カルシウム処理をした後、水で洗浄される。キチンは水酸化ナトリウムにより脱アセチル処理される。溶液は塩酸で中和され、水で洗浄され乾燥される。

環境の問題、資源の利用、リサイクル、持続可能性

当会はキトサンの製造、および使用に関する環境への影響に関して懸念を持っていない。製造工程中の塩酸と水酸化ナトリウムは塩化ナトリウム(塩)となり、環境規則に従い除去されている。原材料は食品産業の副産物である。水のリサイクル、そして植物、動物由来の副産物を植物や家畜への投与は、有機農業の明確な原則である。(参照 Reg. 834/2007, Art.5(c)). キトサンが持続可能な漁業または有機水産養殖や昆虫の飼育から得る副産物であるならば、当会は懸念を持たない。

動物の生活保護の問題:問題がない。

人間の健康の問題:当会は懸念を持たない。

食品の品質と信頼性:当会は懸念を持たない。

伝統的な使用と有機製造における先例

キトサンによる植物強化剤は、過去にドイツの有機農業において使用されている。

キトサン配合の肥料や土壌改良剤は他のEU国でも使用されている。

EU圏外の有機農業での使用許可 / 

国際食品規格(Codex Alimentarius)の有機食品の生産、製造工程、ラベリング、販売に関するガイドラインでは、キトサンは言及されていない。但し、キチンの殺センチュウ剤は認められている。アメリカの有機生産においては、キトサンは合成品と考えられているため、使用することができない。IFOAM(国際有機農業運動連盟)の基準では、“動物製剤と油”は植物防疫に使用が認められている。

その他の該当する問題:なし

キトサン塩酸塩は、農学的な評価、その他の環境に負荷を与えない植物防疫資材の使用を含む幅広い対策のひとつとして、使用することができる。そして、環境に負荷を与える製品の使用を低減する手段となりうる。キトサン塩酸塩のような植物防疫機能の活性は、病原菌の感染によっても起こることで、作物の代謝促進を誘発する。つまり、これは自然の反応である。廃棄物のリサイクル、植物、動物由来の副産物を植物や家畜に投与することは、有機農業の明確な原則である。(参照 Reg. 834/2007, Art.5(c)). しかしながら、原料は持続可能な漁業または有機水産養殖から使用されなければいけない。これは、当会の肥料Ⅰ.3.3章の報告にあるキチンの推薦と一貫している。当会はキトサン塩酸塩の使用に関して懸念を持っておらず、銅や硫酸のような現在認められているいくつかの資材よりも、むしろキトサンを好ましく考える。キトサン塩酸塩は、天然由来物質であり、食品に分類される。そのため、附属書Ⅱの中に現在一覧に記載されている“基本資材”に認められ、別にリストを作る必要はない。(参照 4.8章)

結論

当会はキトサン塩酸塩の使用は、理事会規則(EC)No,834/2007に規定する有機農業の目的、基準、原則に則しているという結論に至った。当会はこの一覧(リスト)の次の“持続可能な漁業、また有機水産養殖(現在のEUの定義による)から得られるキトサンのみ”という制限を修正することを推奨する。附属書Ⅰのキチンについても制限を修正する。

以上です。

▶キトサン塩酸塩は、工業的に製造されたキトサンを意味し、今までのEUの有機農業では、漁業や水産養殖から得られるカニ殻やエビ殻を使うことだけが許されていたことを、今回の修正により、工業的に製造されたキトサン(塩酸塩)を使用することが認められた。キチンについても同様に修正される。

文中の▶は、追加説明として付け加えたもので、原文には存在しません。

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