耕した畑にミミズがいない理由(その1)
大地再生農業の教育の初期段階で、土の健康とミミズの重要性を学んでいきますが、メノビレッジ長沼で、福島大学の金子信博教授のミミズワークショップをしたときに、長年有機栽培をしていた畑にミミズが一匹も見つけられなかったことをレイモンドさんから聞いたことがあります。耕した土壌にミミズはいないだろうと金子教授は予想されていたそうです。

『ミミズの農業革命』(金子信博著 2023)によれば、土壌は常に水分を含んでいて、土壌内の空気は相対的湿度がほぼ100%ある。ちなみに「相対湿度」とは空気中に含まれる水蒸気の割合を表し、「絶対湿度」とは、縦横高さ1メートルの空間に含まれる水蒸気の重さが何グラムかを示します。つまり、土壌内では、土が乾燥していても高い湿度を保ってる。ミミズなどの地中の生物にとってはその水分が必要で、乾燥条件は生存の危機になります。
ニューヨーク州立大学のJ・スコット・ターナー氏によるとミミズは陸上で生活しているが、水生生物に近い体を持っている。ミミズは、排泄器官である腎管で体液を濾過してアンモニアを排泄するために、大量の水を摂取する必要がある。ミミズは水分の蒸散をコントロールする機能を持たないため、土中の環境に依存して生きている。つまり、乾燥している土壌にミミズは棲むことができないため、常に高湿度の環境を求めて移動している。
このようなミミズの生態から、耕起した畑にミミズはいない理由は、トラクターやロータリーによる振動から逃げているということもあるかもしれないが、水分という点からは、耕起した土壌は団粒構造が崩れ、空隙が減少し、水分が蒸散してしまい、ミミズにとっての必要な生活環境が破壊されてしまうことが理由だと考えられます。
2019年から大地再生農業に移行し不耕起となったメノビレッジの畑にミミズが居る理由は納得できます。