キトサンおよびトリコデルマがテンサイ(ビート)に及ぼす多面的な効果
- seoyoshiharu

- 4月19日
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更新日:4月20日
育苗主体だったビート栽培も、近年は直播が増えてきました。それに伴い、発芽や初期生育を安定させるための技術への関心も高まっています。イネや野菜、ジャガイモのように「浸種」で種子を処理する方法に加え、最近ではスプレーによるシードコーティングといった新しい選択肢を検討される方も増えてきました。
そこで今回は、オーストリアの研究チーム(University of Innsbruck とFH Campus Wien University of Applied Sciences )による、キトサンを活用したビートの発芽・生育・病害抵抗性に関する研究をご紹介します。
以下、研究の要約となります。
現在、農業における多くの真菌製剤にはトリコデルマ属菌が含まれており、有効な生物的防除資材として広く利用されている。一方、キトサンは天然由来の高機能バイオポリマーの一つであり、植物の抵抗性を高める物質として、また多様な植物病原菌に対する抗菌作用を持つことが報告されている。
本研究では、トリコデルマ(Trichoderma atroviride)、キトサン、さらに重要な植物病原菌(Cercospora beticola や Fusarium oxysporum など)を用いた三者相互作用の試験(in vitro)を行った。その結果、これらの組み合わせにより、病原菌の増殖を抑える静菌作用において相乗効果が確認された。さらに、テンサイ種子にキトサンをコーティングすると、発芽の開始が早まり、発芽効率も向上することが明らかとなった。

また、トリコデルマの胞子またはキトサンによるプライミング処理は、病害関連遺伝子であるPR-3の発現を誘導した。一方で、キトサンの添加のみが、フィトアレキシン合成に関与するPAL遺伝子や、酸化ストレス応答に関与するGST遺伝子の発現を有意に上昇させ、より強い防御応答を引き起こした。

さらに、これらの資材を葉面に繰り返し散布することで、生育が促進され、防御反応が活性化されるとともに、テンサイにおけるセルコスポラ葉斑病(Cercospora leaf spot)の発生が抑制された。
※これは一般に「褐斑病」と呼ばれている症状に似ています。

以上の結果から、キトサンおよびトリコデルマは、現在使用されている一般的な殺菌剤の代替、あるいは補助資材として非常に有望であると考えられる。キトサンは全身的な抵抗性を誘導するとともに直接的な抗菌作用を示し、一方トリコデルマは主にストレス応答に関わる防御遺伝子の発現を誘導する役割を持つ。
これら2つの資材は異なるシグナル伝達経路を介して作用するため、併用することで相乗効果が生まれると考えられ、圃場における組み合わせ利用において高い有効性が期待される。
【解説】
遺伝子スイッチの発現による活性は下記の通りです。

