植物はどうやって菌根菌と病原菌を見分けているのか?
- seoyoshiharu

- 15 時間前
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土の中には無数の菌類が存在しています。その中には病原菌もいれば、菌根菌(AM菌)のように植物に利益をもたらす共生菌もいます。では植物は、どのようにして敵と味方を見分けているのでしょうか。その鍵を握るのが、植物の根の細胞表面に存在する「受容体(レセプター)」です。

植物はまず「キチン」を感知する
多くの菌類の細胞壁にはキチンが含まれています。植物はキチン断片を感知すると、「病原菌が侵入した」、「危険が迫っている」と判断して防御反応を開始します。この反応は植物免疫の第一段階であり、活性酸素の生成、防御酵素の活性化、キチナーゼ産生などが起こります。
菌根菌もキチンを持っている
ここで疑問が生まれます。菌根菌も真菌の仲間なので細胞壁にキチンを持っています。もし植物が単純にキチンだけを認識しているなら、菌根菌も病原菌として排除されてしまうはずです。しかし実際にはそうなりません。
菌根菌の共生シグナルと植物の受容体
近年の研究により、植物は単にキチンを認識しているのではなく、病原菌由来の長鎖キチンと、菌根菌が放出する共生シグナル(Myc-LCO、CO4、CO5など)を異なる受容体で認識していることが明らかになっています。そのため植物は病原菌には防御反応を示しながら、菌根菌とは共生関係を築くことができます。
※菌根菌の「共生シグナル」:Myc-LCO(Mycorrhizal Lipochitooligosaccharide)や短鎖キチンオリゴマー(CO4・CO5)
病原菌を認識する受容体
CERK1系受容体 - 長鎖キチンを認識 - 強い防御反応を誘導
菌根菌を認識する受容体
LYK・LYR系受容体 - Myc-LCOを認識 - 共生シグナルを誘導
つまり植物は「キチンがあるかどうか」ではなく、「どのような形のキチンなのか」まで見分けているのです。
キトサンはどう認識されるのか?
キトサンはキチンを脱アセチル化して作られます。しかし農業で使用されるキトサンの多くは完全に脱アセチル化されているわけではありません。例えば脱アセチル化度85%のキトサンであれば、分子中には約15%のN-アセチルグルコサミン残基、すなわちキチン構造が残っています。そのため植物はキトサンを単一の物質として認識しているのではなく、キチン由来のシグナル、キトサン由来のシグナルの両方を受け取っている可能性があります。実際に植物にはキチンを認識する受容体(CERK1/Chitin Elicitor Receptor Kinase 1など)が存在し、菌類由来のキチン断片を感知すると免疫反応を開始することが知られています。
一方、キトサンそのものについては、キチンとは異なる認識経路も存在すると考えられており、細胞膜や細胞壁との相互作用によって防御反応が誘導されることが報告されています。その結果、植物はキトサン散布によって、活性酸素の生成、防御関連酵素の活性化、フェノール化合物の蓄積、PRタンパク質の発現などを引き起こし、病害への備えを強化します。
しかし菌根菌は、病原菌とは異なる共生シグナル(Myc-LCOや短鎖キチンオリゴマー)を植物に送っているため、植物は敵と味方を見分けているのではなく、まず警戒し、
その後に対話して、植物免疫を活性化しながらも菌根菌との共生は維持されると考えられています。
まとめ
現在の研究では、植物は病原菌のキチン、菌根菌の共生シグナル、キトサンに含まれるキチン分子を別々に認識し、それぞれ異なる反応を引き起こしていると考えられています。つまり、植物は単純に「菌かどうか」を見ているのではなく、相手が送ってくる化学シグナルを読み取って敵と味方を判断しているということです。
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